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なぜソフトボール投手に下半身が重要なのか?

執筆者の写真: 幸平 宮下
幸平 宮下
9月7日
読了時間: 5分

KoaLab 宮下です。 本日は、投球理論第3弾

「なぜソフトボール投手に下半身が重要なのか?」という内容でお届けします。



はじめに


「もっと下半身を使って投げよう」

投手であれば、一度は言われたことがあるのではないでしょうか。


しかし、

「下半身を使うって、具体的にどういうこと?」

と聞かれると、意外と説明するのは難しいものです。


深く沈み込むことなのか。

強く蹴ることなのか。

大きくステップすることなのか。


実は、「下半身を使う」という言葉だけでは、投球動作を十分に説明できません。


前回の記事では、投球は身体の各部位が連続して働く**運動連鎖(Kinetic Chain)**によって行われることを紹介しました。


今回はそのスタート地点となる「下半身」に注目して、ソフトボール投手にとって下半身がなぜ重要なのかを考えていきます。



投球は腕から始まっているわけではない


ボールを持っているのは手です。


そのため、投球を見るとどうしても、

  • 腕の振り

  • 肘の使い方

  • 手首

  • リリース

に目が向きます。


しかし、投球は腕だけで完結する運動ではありません。


Kiblerらは、スポーツ動作における「コア」を、単に腹筋としてではなく、力を生み出し、伝達し、末端の動きをコントロールするための中心的な役割を持つものとして説明しています。


ソフトボール投球でも、

下肢 → 骨盤・体幹 → 上肢 → ボール

という全身のつながりを考える必要があります。


つまり下半身は、

腕を動かすための「土台」

の一つなのです。



「下半身を使う=強く蹴る」ではない


ここはKPAで特に伝えたいポイントです。

下半身が重要だからといって、

地面を強く蹴ればいい

ということではありません。


ソフトボール投球では、投球側の脚と踏み込み脚で役割が異なります。

投球側では、投球開始から身体を前方へ移動させていく必要があります。


一方、踏み込み脚が接地した後には、前方へ移動してきた身体を支えながら、その後の骨盤・体幹・上肢の運動へつなげる必要があります。


Oliverによるウインドミル投法の解説でも、下肢の筋活動や踏み込み脚による支持、骨盤の安定性が投球動作に重要であることが示されています。


つまり、

「どれだけ強く地面を押したか」だけではなく、その力をその後の動きにつなげられたか

まで考える必要があります。



下半身で生み出した力は、骨盤・体幹を通る


ここでもう一つ重要なのが、

Lumbopelvic-Hip Complex(LPHC)

です。


簡単に言えば、

  • 股関節

  • 骨盤

  • 体幹

を含めた身体の中心部分です。


Gilmerらは、ソフトボール選手のオーバーハンドスローを対象として、Single Leg Squatで評価したLPHCの安定性によって、体幹・骨盤・肩の運動学に違いがみられることを報告しています。


※この研究はウインドミル投法ではなく、ソフトボール選手のオーバーハンドスローを対象としている点には注意が必要です。


重要なのは、

下半身だけを強くしても、その力を骨盤・体幹で受け取れなければ運動連鎖は成立しない

ということです。



下半身がうまく使えないと腕が頑張る?


運動連鎖のどこかでエネルギーの伝達がうまくいかなければ、別の部位でそれを補う必要があります。


実際、ソフトボール投手を対象とした研究でも、下肢やLPHCの筋力・安定性が低下すると、近位部での力発揮が小さくなり、パフォーマンスを維持するために上肢で代償する可能性が指摘されています。


これは、

「腕を使ってはいけない」

という意味ではありません。


腕は当然使います。


問題なのは、

本来、全身で分担するはずだった仕事を腕だけが引き受けてしまうこと

です。


だからこそKPAでは、腕の振りだけを見るのではなく、下半身からリリースまでを一つのシステムとして考えます。



では、良い下半身の使い方とは?


ここで、

「じゃあ、正しい下半身の使い方を教えてください」

と思うかもしれません。


しかし、第1回の記事を思い出してください。


KPAでは、

「全員に共通する一つの正しいフォームがある」

とは考えていません。


身体の大きさ、筋力、可動性、投球スタイルなどが違えば、下半身の使い方にも違いが生まれるからです。


そのため、

「膝を○°曲げる」

「ステップ幅を身長の○%にする」

といった形だけを見るのではなく、


① 力を生み出せているか

② 身体を目的方向へ移動させられているか

③ 踏み込み脚で身体を受け止められているか

④ その力を骨盤・体幹・上肢へつなげられているか


という機能を見ることが重要だと考えています。



「強い脚」だけでは速いボールは投げられない


スクワットが強い。

ジャンプが高い。

脚の筋肉が大きい。


これらは投手にとってプラスになる可能性があります。

しかし、それだけで球速が上がるとは限りません。


必要なのは、

持っている身体能力を投球という課題の中で利用すること

だからです。


これは、KPAがトレーニングだけでなく、

  • 投球ドリル

  • 動画分析

  • フィジカル評価

を組み合わせている理由でもあります。

「強くなること」と「投球で使えること」は分けて考える必要があります。



まとめ


今回覚えてほしいのは3つです。


① 投球は腕だけではなく全身で行う運動

下半身は運動連鎖を構成する重要な要素です。


② 下半身を使う=強く蹴る、ではない

力を生み出し、それを次の身体部位へつなげることまで考える必要があります。


③ 大切なのは「力の大きさ」だけではなく「力の伝達」

下肢 → 骨盤・体幹 → 上肢 → ボール。


この流れ全体を見ることが、投球メカニクスを理解する第一歩になります。



引用文献

  1. Kibler WB, Press J, Sciascia A. The role of core stability in athletic function. Sports Med. 2006;36(3):189–198.

  2. Oliver GD. The windmill softball pitch: optimal mechanics and pathomechanics of injury. Athl Ther Today. 2010;15(6):28–31.

  3. Gilmer GG, Washington JK, Dugas JR, Andrews JR, Oliver GD. The role of lumbopelvic-hip complex stability in softball throwing mechanics. J Sport Rehabil. 2019;28(2):196–204. doi:10.1123/jsr.2017-0276.

  4. Pletcher ER, Bordelon NM, Oliver GD, Lovalekar M, Gorse K, Nagai T, Connaboy C. The influence of a simulated game on muscular strength in female high-school and collegiate softball pitchers. Sports Biomech. Published online June 16, 2021. doi:10.1080/14763141.2021.1941229.

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