投球フォームはどのように作られるのか?
- 幸平 宮下
- 3 日前
- 読了時間: 4分
〜フォームを決める3つの制約条件〜
はじめに
前回の記事では、
「理想のフォームは一つではない」
というお話をしました。
では、フォームに正解がないのであれば、
「投球フォームは何によって決まるのでしょうか?」
実は、投球フォームは偶然できあがるものではありません。
私たちの身体は、さまざまな条件の中で最も効率の良い動きを自然に選択しています。
今回は、その考え方の土台となる**「制約理論(Constraints Model)」**について解説します。
制約理論とは?
1986年にKarl Newellによって提唱された考え方では、
人の動きは次の3つの制約(Constraints)の影響を受けて決まるとされています。
個人(Individual)
環境(Environment)
課題(Task)
つまり、
フォームは「教えられるもの」ではなく、3つの条件の中で自然に作られるものなのです。
① 個人の制約(Individual Constraints)
まず一つ目は、
選手自身の身体的・心理的な特徴です。
例えば、
身長
体重
手の大きさ
柔軟性
筋力
関節可動域
バランス能力
投球経験
などがあります。
例えば、身長180cmの投手と160cmの投手では、
同じフォームが最適とは限りません。
股関節が柔らかい選手と硬い選手でも、
身体の使い方は自然と変わります。
つまり、
身体が違えば、最適なフォームも変わるということです。
② 環境の制約(Environmental Constraints)
次は、
周囲の環境です。
例えば、
グラウンドの状態
雨や風
気温
室内か屋外か
試合か練習か
などがあります。
ソフトボールでは、
雨の日には滑らないように無意識に動きが変わります。
風が強ければ、
リリースの感覚も変わります。
試合終盤で疲労が溜まれば、
フォームも少しずつ変化します。
このように、
環境によって身体は自然に適応しています。
③ 課題の制約(Task Constraints)
最後は、
「何を達成したいのか」
という目的です。
例えば、
球速を上げたい
コントロールを安定させたい
ライズボールを投げたい
打たせて取る投球をしたい
目的が違えば、
選ぶフォームも変わります。
同じ投手でも、
全力投球とキャッチボールでは動きが違います。
つまり、
身体は課題に合わせて最適な動きを選択しているのです。
フォームは3つの制約のバランスで決まる
この3つは、
どれか一つだけではありません。
例えば、
球速を上げたいと思っても、
身体がまだその動きに対応できなければ、
思うようなフォームにはなりません。
逆に、
身体能力が高くても、
試合という環境では緊張や疲労によって動きは変わります。
つまり、
フォームは
身体
環境
課題
この3つが影響し合った結果なのです。
「フォームを変える」とは何を変えることなのか?
ここで大切なのは、
フォームだけを変えようとしても、
本質的な改善にはつながりにくいということです。
例えば、
「もっと踏み込んで投げよう」
と言われても、
股関節の可動域が不足していれば、
身体はその動きを受け入れられません。
また、
「骨盤をもっと回そう」
と言われても、
タイミングを感じるドリルや環境がなければ、
新しい動きは定着しません。
つまり、
フォームを変えるためには、
制約そのものを変える必要があるのです。
KPAがフォームを教えない理由
KPAでは、
「こう投げましょう」
という指導を最初には行いません。
まず確認するのは、
身体はどうなっているか?
今どんな課題があるのか?
どんな環境で練習しているのか?
です。
その上で、
ドリルやトレーニングを通して、
身体が自然と新しい動きを選べる環境を作っていきます。
これがKPAの考えるフォーム改善です。
まとめ
今回のポイントは3つです。
① フォームは3つの制約によって決まる
個人
環境
課題
② フォームだけを変えようとしても上手くいかない
動きの背景にある制約を変えることが重要です。
③ 自分に合ったフォームは、自分の制約の中で作られる
だからこそ、他人のフォームをそのまま真似するのではなく、自分の身体や課題を理解することが大切になります。
次回は、
「ソフトボール投手に正解のフォームは存在するのか?」
について解説します。
なぜ人は何度もフォームを修正しても、気づけば元の投げ方に戻ってしまうのか。
その理由を、私が行ってきた研究結果とともにひも解いていいきます。
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