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床反力とは何か?

執筆者の写真: 幸平 宮下
幸平 宮下
9月15日
読了時間: 7分

〜地面を押す力が投球につながる仕組み〜


はじめに


前回の記事では、ソフトボール投球における下半身の役割について解説しました。


投球は腕だけで行う運動ではなく、

下肢 → 骨盤・体幹 → 上肢 → ボール

という全身のつながりによって行われます。


では、そのスタートとなる下半身は、どのようにして力を生み出しているのでしょうか。


そこで今回取り上げるのが、

床反力(Ground Reaction Force:GRF)です。


投球指導では、

「もっと地面を蹴ろう」

「軸足で地面を押そう」

「踏み込み脚を使おう」

といった言葉がよく使われます。


しかし、単純に地面を強く押せば球速が上がるわけではありません。

今回は床反力の基本から、投球の中でどのように利用されているのかを考えていきます。



床反力とは?


床反力という言葉は難しく感じるかもしれませんが、考え方はシンプルです。

例えば、その場でジャンプするとき。

私たちは地面を下方向へ押します。

すると地面から身体に対して、反対方向の力が返ってきます。



これが床反力です。

これはニュートンの運動の第3法則、

「作用・反作用の法則」

によって説明できます。


つまり、

身体が地面に力を加える↓地面から身体へ力が返ってくる↓その力によって身体が動く

ということです。


投球でも同じように、地面との相互作用を利用して身体を動かしています。



床反力には「方向」がある


床反力を考えるときに大切なのが、

力の大きさだけを見ないことです。


床反力には方向があります。

大きく分けると、

  • 鉛直方向

  • 前後方向

  • 左右方向

です。



例えば、地面に大きな力を加えていたとしても、その力が投球に必要な方向と一致しているとは限りません。


だから、

「床反力が大きい=良い投球」とは言えません。


どのタイミングで、

どの方向へ、

どの程度の力を加えたのか。


ここまで考えることで、初めて床反力と投球動作の関係が見えてきます。



ソフトボール投球には2つの脚がある


ソフトボール投球の床反力を考えるときは、

軸足と踏み込み脚を分けて考える必要があります。


同じ「脚」でも、投球中に求められる役割が異なるからです。

非常にシンプルに整理すると、


軸足:身体を移動させる

踏み込み脚:移動してきた身体を受け止め、次の動きにつなげる


という役割があります。


ただし、実際の投球はもっと複雑です。

軸足にも支持する役割がありますし、踏み込み脚にも身体の回転や上方への運動に関係する

力が生じます。


そのため、

軸足=アクセル踏み込み脚=ブレーキ

と完全に分けてしまうのではなく、それぞれが異なるタイミング・方向で床と相互作用していると考える方がよいでしょう。



軸足は身体を前へ運ぶ


投球開始時、投手は投手板に接している軸足を利用して身体を動かしていきます。

このとき重要になるのが、前後方向の床反力です。


身体を投球方向へ移動させるためには、地面に対して反対方向へ力を加える必要があります。

すると、その反作用として身体には投球方向への力が加わります。


つまり、

軸足で地面と相互作用する↓身体が投球方向へ移動する↓その運動を次の局面へつなげる

という流れです。


ここで重要なのは、

「強く蹴ること」そのものが目的ではない

ということです。


地面から得た力によって身体がどう動いたのか。

そして、その動きを次の局面へつなげられたのか。


ここまで見る必要があります。



踏み込み脚は「受け止める」


身体が前方へ移動すると、踏み込み脚が接地します。

ここから踏み込み脚には大きな床反力が加わります。


踏み込み脚の重要な役割の一つが、

前方へ移動してきた身体を受け止めることです。


一見すると、

「せっかく前に進んでいるのに、止めてしまっていいの?」

と思うかもしれません。


しかし、この「受け止める」という働きは、必ずしもエネルギーを無駄にすることを意味しません。


前方への運動をコントロールしながら、骨盤・体幹・上肢の運動へつなげていく必要があります。


ソフトボール投手を対象とした研究でも、踏み込み脚に生じる床反力と球速との関連が報告されています。


つまり、踏み込み脚は単に着地するだけの脚ではありません。

投球の後半において、全身の運動を成立させる重要な役割を持っています。



「ブレーキ=悪い」ではない

スポーツでは、「ブレーキをかけない方がいい」

というイメージを持つことがあります。


しかし、人間が大きな速度を生み出すためには、身体のすべての部位が同じ方向へ動き続ければよいわけではありません。


前回紹介した運動連鎖では、

ある身体部位が加速し、その後減速することで、次の身体部位が加速していく

という現象が起こります。


投球も、

下半身

↓

骨盤

↓

体幹

↓

上肢

↓

ボール


と身体各部が順番に働いていきます。


そのため、踏み込み脚によって身体の前方移動をコントロールすることは、その後の骨盤や体幹の動きを作るうえでも重要だと考えられます。


重要なのは、

「止めるか、止めないか」ではなく、その力を次の運動へどうつなげるか

です。



床反力が大きければ球速は上がる?


ここで注意したいポイントがあります。


研究で、

「床反力と球速に関連がある」

という結果が出たとしても、


「床反力を大きくすれば必ず球速が上がる」

とは言えません。


「関連があること」と「原因であること」は違うからです。

さらに投球は、

  • 床反力

  • 下肢の動き

  • 骨盤の回旋

  • 体幹の回旋

  • 肩・肘・手首の動き

  • タイミング

など、多くの要素によって成立しています。


そのため、

床反力だけを大きくすることを目的にしない

ことが重要です。



大切なのは「力 × 方向 × タイミング」


KPAでは、床反力を見るときに、

どれだけ強いか

だけではなく、


① どの方向に力を加えているか

② いつ力を加えているか

③ その結果、身体がどう動いたか


という視点を大切にしています。


例えば同じ大きさの床反力でも、

投球方向への身体移動につながっている投手と、

身体が必要以上に上下・左右へ動いている投手では、


その意味は異なります。


だからこそ、

「地面をもっと強く蹴ろう」

だけでは十分ではありません。


地面から得た力を、投球という動作の中でどう利用するか。

ここまで考える必要があります。



床反力は「結果」でもある


もう一つ覚えておいてほしいのが、

床反力は身体の使い方によって生じた結果でもあるということです。


例えば、

股関節の使い方、

重心の移動、

ステップ方向、

接地位置、

身体の姿勢などが変われば、

地面へ加える力も変化します。


そのため床反力の数値だけを見て、

「この力をもっと大きくしよう」

と考えるのではなく、


なぜこの床反力になったのか?

を投球動作と一緒に考えることが重要です。


これはKPAが、

数値だけで投球を評価しない

理由でもあります。



まとめ

今回覚えてほしいポイントは4つです。

① 床反力とは、身体が地面に加えた力に対して地面から返ってくる力

投球も地面との相互作用によって行われています。


② 床反力には大きさだけでなく方向がある

「強く押す」だけではなく、どの方向へ力を加えるかが重要です。


③ 軸足と踏み込み脚では役割が異なる

軸足は身体の移動、踏み込み脚は前方への運動を受け止めながら、その後の運動につなげる役割を担います。


④ 大切なのは床反力を大きくすることではない

力の大きさ × 方向 × タイミング × その後の身体運動

まで含めて考える必要があります。


投球に必要なのは、

「地面を強く蹴ること」ではなく、「地面をうまく使うこと」

です。



次回

ここまで、

運動連鎖 → 下半身 → 床反力

と見てきました。

では、身体を前方へ運んだあと、踏み込み脚では実際に何が起こっているのでしょうか。

次回は、

踏み込み脚は「ブレーキ」なのか?

〜前方への力を次の動きにつなげる〜

について、踏み込み脚の床反力と球速との関係を中心に掘り下げていきます。


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